大判例

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東京高等裁判所 昭和56年(行ケ)257号 判決

1 請求の原因1ないし3の事実は、当事者間に争いがない。

2 そこで、原告主張の審決取消事由の存否について判断する。

一 成立に争いのない甲第三号証の一によれば、原出願の発明の要旨は、その特許請求の範囲記載のとおり「屈折率の大きい透明固体材料と屈折率の小さい透明固体材料とよりなる光伝送路にして、該伝送路の軸線に対し直角方向に連続的に変化する屈折率分布を有することを特徴とする光伝送装置。」であつて、別紙図面第1図に例示されている従来公知のクラツド型のオプテイカルフアイバーを改良し、別紙図面第2図及び第3図に示すような直角方向に連続的に変化する屈折率分布をもたせることによつて、クラツド型のオプテイカルフアイバーにない優れた効果を発揮するいわば連続変化型のオプテイカルフアイバーであることが認められる。

ところで、本願発明におけるオプテイカルフアイバーの材料は、本願発明の要旨に記載のとおりガラスであるが、前掲甲第三号証の一によれば、原出願の発明では、右オプテイカルフアイバーの材料として透明固体材料という表現のみが存し、右透明固体材料にどのような物質が含まれているかについては全く記載されていないことが認められる。

しかしながら、原出願の発明はクラツド型のオプテイカルフアイバーの性質を改良することを目的として、屈折率分布を連続的にした発明であるが、そのために、特に透明固体材料の選択に工夫をした発明でないことは明らかであるから、当該技術分野における通常の技術的知識を有する者であれば、原出願の明細書に記載された透明固体材料は、先行技術のクラツド型のオプテイカルフアイバーに使用されていた透明固体材料をそのまま使用するものとして理解しうると認めるのが相当である。そして、従来クラツド型のオプテイカルフアイバーの材料としてガラスも使用されていたことは当事者間に争いがないから、原出願の発明における透明固体材料はガラスを含むことが開示されていたというべきである。

二 この点に関し、被告は、連続変化型オプテイカルフアイバーの透明固体材料をガラスに限定した場合、修飾酸化物のガラス中の濃度を連続的に変化させなければならないが、このようなことは原出願日当時には全く知られていなかつたことであるから、この修飾酸化物の分布を変えることが発明を実施する上で必要であるのに、原出願にはその記載がない旨主張する。

しかしながら、前掲甲第三号証の一によれば、原出願の明細書には拡散現象を利用した四種類の連続変化型オプテイカルフアイバーの製法が記載されており、特に、「第4図は製造法の一例を示すものである。7は屈折率の大きい透明固体材料であり、これを溶解炉8の中で溶融し、下側のノズル9から引き出す。その後硼素や燐を含む雰囲気炉10の中を通して熱処理を行えば、屈折率の大きい透明固体材料7に硼素や燐が、外側から軸線に向かつて均一に拡散する。この結果、屈折率分布が軸線に対して直角方向に連続的に変化する光の伝送装置を形成できる。」旨記載されていることが認められる。そして、成立に争いのない甲第一一号証、同第一四号証及び弁論の全趣旨によれば、硼素(ボロン)は石英ガラスと同一組成であるsio2中を熱拡散し、一五〇〇℃ないし一六〇〇℃の高温状態においてもその実施が可能であること、また燐も石英ガラス中を熱拡散し、直径五〇μmの石英ガラスフアイバーに対し燐が一〇μm拡散するのに必要な時間は、一四〇〇℃のとき一・七日、一五〇〇℃のとき二三時間、一六〇〇℃のとき一三・七時間であつて実施可能であることが認められる。

したがつて、原出願の明細書には、透明固体材料としてガラスを使用した場合当該技術分野における通常の技術的知識を有する者において実施することができる程度に連続変化型オプテイカルフアイバーの製法が記載されているというべきである。そして、右の方法によつてガラスの屈折率分布を変えることができる以上、被告主張のように修飾酸化物の分布を変えることが本願発明の連続変化型オプテイカルフアイバーの製法に欠くことのできない事項とは認められない。

3 以上に検討したとおり、原出願には、連続変化型オプテイカルフアイバーの透明固体材料としてガラスを用いる旨の発明が開示されていたというべきであるから、原出願にその旨の発明の開示が全くなかつたので、本願は原出願に含まれた発明の一部を適法に分割したものとは認められないとした判断は誤りであり、これを理由に原出願日への遡及を否定し、本願発明が原出願日以降の刊行物である第一引用例ないし第五引用例と同一であるとした審決は、違法であるから、取消されるべきである。

4 よつて、本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由があるのでこれを認容する。

〔編註その一〕 本願発明に関する事項は左のとおりである。

1 特許庁における手続の経緯

原告は昭和四七年七月一〇日、昭和三九年一一月一二日出願の特願昭三九―六四〇四〇号(以下「原々出願」という。)から昭和四〇年五月五日に分割出願した特願昭四〇―二六二八八号(以下「原出願」という。)からの分割出願として、名称を「光の伝送装置」とする発明につき特許出願(昭和四七年特許願第六八九〇四号)をし、その後昭和四七年一一月一三日付手続補正書、昭和五一年二月二日付手続補正書、昭和五四年四月九日付手続補正書によりそれぞれ手続補正に及んだが、昭和五四年四月九日付手続補正については、昭和五四年一一月二〇日却下の決定があつて確定し、更に昭和五五年一二月一七日、昭和四七年一一月一三日付手続補正による特許請求の範囲記載のとおりの発明(以下「本願発明」という。)について拒絶査定がされた。

そこで、原告は昭和五六年三月四日審判を請求し、昭和五六年審判第三六四三号事件として審理された結果、同年九月一日、「本件審判の請求は成り立たない。」との審決があり、その謄本は、同月一九日原告に送達された。

2 本願発明の要旨

(一) 屈折率の大きい透明ガラスと屈折率の小さい透明ガラスとより成る光伝送路にして固体拡散法により前記伝送路の軸線に対し直角方向に連続的に変化する屈折率分布を有する如く構成したことを特徴とする光の伝送装置。

(二) 前記光伝送路を可撓性としたことを特徴とする前記特許請求の範囲第一項記載の光の伝送装置。

(別紙図面参照)

〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。

別紙図面

<省略>

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